映画「君たちはどう生きるか」ネタバレ感想 母探しの旅から現実世界を生きる選択へ

映画

2023年7月14日に劇場公開されたジブリ映画「君たちはどう生きるか」

初日鑑賞のレビューです🎥

 

「君たちはどう生きるか」は、宮崎駿監督の12本目となる劇場用長編映画

2013年に公開された「風立ちぬ」を最後に長編からの引退を発表していた宮崎駿監督が、引退を撤回して10年ぶりにつくった映画となります

事前広告宣言が一切ないということも話題になりました

 

平日金曜の18時台の回で、座席は満席

というか、私の行った映画館は、初日はどの回も全て満席でした!

数日前に座席予約をしたのですが、その時点で残り数席でギリギリとれた感じ

「さすがジブリやなぁ」と驚きましたよ

世代は30~60代、男性の方がやや多く、一人で来ている方が多い印象でした

 

尚、私自身は、ジブリがどちらかというと好きだけど、コアなファンではない、のスタンスで観ています😃

 

 

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鑑賞直後のリアルな感想(ネタバレなし)

  • 大スクリーンで心惹かれるアニメーション映像
  • 『宮崎駿』感あふれている
  • 歴代作品の要素が散りばめられている
  • 気になる親子関係
  • 母探しの旅
  • アオサギはもう一人の自分?
  • 現実世界を生きる強さ
  • キャストがやたら豪華
  • 一度じゃ咀嚼できない!

 

あらすじ紹介の後に、ネタバレありで、詳細レビューしていきます

 

 

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あらすじ

物語の舞台は、第2次世界大戦下の日本。主人公は入院中の母を火事で亡くし、父親の再婚に伴って東京から田舎へ移り住んだ少年・牧眞人(まきまひと)

父親の再婚相手は、死んだ母とそっくりな母の妹だった。一風変わった7人の老婆が仕える屋敷に住み始めた眞人。その屋敷の近くには、かつて物語が好きな大おじが建て、忽然と姿を消したという廃墟同然の塔があった。眞人は人の言葉をしゃべるアオサギに導かれ、不思議な世界へと冒険に出る。

映画ナタリーHP

 

 

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鑑賞レビュー(ネタバレあり)

ここからはネタバレありの感想になります

これから作品を鑑賞予定の方はお気をつけください

尚、記憶を辿って書いているため、曖昧な点、詳細が異なる点があるかもしれません

ご容赦ください

 

心惹かれるアニメーション映像

まず映像について

宮崎駿の集大成的な作品だからなのか、過去の宮崎作品を彷彿とさせる描写があちこちに✨

モチーフとして頻繁に使われる「火」「塔」「石」、そして「草原」「星空」「青空」「雲」といった自然描写

大きいスクリーンで、しかも最前列で観たせいか、映し出される映像に心持っていかれました!

なんて言ったらいいのか、つい観入ってしまって、草原を流れる風や夜空を流れる星を擬似体験したような・・・

実は、宮崎作品DVDで観ることの方が多くて、劇場で観たのは2作くらい(少な)だったので・・・「この期に及んで何当たり前のこと言ってんだ!」な素人感想でごめんなさいなんだけど、ほんと、そう感じたのよー

 

気になる親子関係

主人公・牧眞人の親子関係がすごく気になったー

物語の冒頭で眞人は火事で母・ヒサコを亡くします

まだ子どもの眞人にとっては、トラウマ級の大きな出来事⚡️

亡き母の夢をみて、泣きながら目覚める描写も

 

眞人と父

そんな中、父親は、1年後に母親の妹・夏子と再婚、しかもすでに妊娠中ときたもんだ

当時はよくあることだったのかどうかは知らんが、眞人は気持ちがついていかないわけで

父親は、イケイケ(死語)で羽振りのいい仕事のできる男という感じ、新しい妻とラブラブだし、息子の抱く母を失ったことによる喪失感、救えなかった罪悪感にはちっともさっぱり気づかない

自傷して頭から流血した眞人に「やった奴はだれだ?見つけてやる!」と眞人の話をろくに聞かず、いじめと決めつけ、学校にクレーム言いに行っちゃうキムタクもとい眞人の父(声優がキムタク)

良かれと思ってやることが、眞人のしてほしいことと、見事なまでにズレる

母を亡くし、父と通じ合えない、新しい環境にもなじめない、行き場のない眞人だから、ファンタジーの世界へ引っ張られていったようにも見えた

眞人の行方がわからなくなってからは、必死に息子を探していて、最後は父子関係がいい感じになったっぽかったのでよかったです、はい

 

眞人と母

突然の実母の死を、受け入れきれていない眞人

急に「今日から母」として現れた義母には、複雑な思いと距離感がある

実母と義母は姉妹なので、似ているし、姉妹としての関係性(姉の息子を大切に育てたいという義母の思い)もある

 

はじめに、眞人がアオサギに不思議な世界へと取り込まれそうになった時に、助けたのは義母・夏子の弓矢だった

そして、実母が眞人のために残した「君たちはどう生きるか」の本を読んで涙する眞人

それぞれの母の「保護」や「愛情」に触れる描写の後に

眞人は、アオサギに導かれて、実母(偽物で触れたら液体になっちゃった)のちに義母を助けるために不思議世界が広がる塔の中へ入っていく

 

塔の中では、あれやこれやとあるんだけど

この映画は、眞人の「母をたずねて三千里」物語の側面も強いように思う

いやこれまでも、宮崎作品といえば母子関係や母性をテーマの一つとして絡めてくるよね、いろんな意味で「母がいない」こと多いよね、と思っていたけれど、本作品は割とダイレクトな母探し

 

さまざまな出会いや経験を経て、義母・夏子とともに現実世界へと帰ることのできた眞人

心理的母不在を乗り越えて成長した、ということでよいのかな

 

余談ですが、義母を見つけた時に「夏子かあさーん」て眞人が突然母さん呼びして、わたくし「え?それはさすがに唐突過ぎん?」とちょっと違和感を覚えたのでした

塔の中での経験を通して義母を母として受け入れていったのかな、と思ったりもしたけど、最終的に、実母であれ義母であれ、結局眞人が探していたのは「母親的な存在」「母性」だったのかな、というところに勝手に落ち着いたのだった

 

アオサギは眞人自身ではないか

眞人とともに全編通して登場するのがアオサギ(最後まで声が菅田将暉さんてわからなかった)

はじめは「のぞきや」であり、「母君は、あんたの助けを待っている」と眞人を挑発して不思議な世界へ連れ込もうとする存在として描かれている

眞人も、脅威的な敵としてアオサギを警戒し武器の弓矢をつくり戦う

不思議な世界の広がる塔の中に入り、アオサギの落とした羽を矢羽根とした弓矢で、眞人がアオサギの嘴を射抜くと、アオサギの中からちっこいおっさんが出てきて(急にコミカルに弱体化w)飛べなくなってしまう

なんやかんや一緒に旅をすることになり

「夏子のとこへ案内しようか?」というアオサギに「いい自分で探す」とそっけなく返して「生意気!」と言われるようになり

眞人にとって、アオサギは敵や恐れの対象ではなくなっていく

そして、弓矢で穴があいてしまったアオサギの嘴を眞人が治し(傷つけた人が治さないと再び飛べない)、徐々に2人は相棒のような関係性になっていく

 

眞人は、最後にアオサギを友達と言っていたけれど、アオサギは眞人の中の不安や恐怖だったり、もう一人の眞人というか、眞人の一部のようにも思えた

喪失や罪悪感や不安や恐怖でいっぱいの時に心の中を見透かす脅威的な敵として描かれ、真正面から受け止めて弓矢で射たことで弱体化

アオサギに惑わされなくなり、アオサギの傷を眞人が治す流れは、自分の中のぐちゃぐちゃな感情と距離をおけるようになり、自分の傷つきを自分で癒せるようになったようにも受け止められる

最後は、何だかいい相棒みたいになって、眞人が、自分自身といろんな折り合いがついて成長したんだなぁ、なんて感じたりもしました

  

キリコ

塔に入った後「コレヲ学ブモノハ死ス(確かこんな文言だった気がする)」みたいな文字が書かれた門があり、大量のペリカンに押し込まれて中にいれられてしまった眞人を、結界みたいのをつくって助けてくれて、船で一緒に逃げたのが、キリコという女性

このキリコは、眞人と一緒に塔の中についてきてきまった、ばあや(7人いるばあやの内の一人)の若かりし頃の姿らしい(どこにも面影ないんだけどw)

寝ている眞人を囲んで守っている6人のばあやそっくりの置物、かわいかったな

「何しに来た?」というキリコに「上から来た」「夏子さんを探しに」夏子のことは「父さんの好きな人」と説明

キリコと一緒に魚を取り、内臓をかっさばき、熟したワラワラが人として生まれるために飛んでいくのを見守る眞人

そこにペリカンがきてワラワラを食べてしまう、そんなペリカンを火で焼く「ヒミ」という女性

眞人が見つけた瀕死のペリカン、空高く飛ぼうとしても、自分たちはここでワラワラを食べることしかできない(的なことを言っていたと思う、この辺うろ覚えでちょっと違うかも・・・)みたいなことを言い、命尽きる

眞人はそのペリカンを埋葬する

キリコと別れ、眞人はアオサギと夏子を探しに行く

お守りとして、キリコは、キリコばあやの置物を渡す(尚、これを持っていたため、眞人は、現実世界に戻った後も塔の中の世界の記憶が消えなかった)

 

若かりしキリコはこちらの世界の生活が長いようだったんだよな

最後に、キリコはヒミと一緒に、過去の世界へ続く扉から出ていったんだけど

塔の中の世界の若いキリコと現実世界のキリコばあやが、どうリンクしているのか、初見ではよくわからなかった・・・

塔の中の世界で、眞人をピンチから救い、守り、食事など世話をし、この世界のことを教えてくれたのがキリコ

キリコパートでは、魚をとらえてさばいて食料として与える、生まれていくワラワラ、ワラワラを食べるペリカン、ペリカンを焼くヒミ、宿命にあらがえず亡くなっていくペリカン、と、食物連鎖や生と死が描かれていたように思いました

 

ヒミ

キリコと別れた眞人は、ヒミの家へ行きます

ヒミは、火を司る女性

ヒミの家の周辺は美しい緑や花に溢れていて、映像としてみていて綺麗だったー

そこに、自分が不思議な世界へくる入口となった塔が建っていることに気づく眞人

「あの塔は、いろんな世界にまたがって建っている」とヒミが言います

「夏子を探しに来た」「僕の母は死んだ」と説明する眞人に「私と同じだ」とヒミ

 

腹ごしらえをしたヒミと眞人は「うんと奥」へ向かう

そこにはおびただしい数のドアが並んでおり、それぞれにルームナンバーのような数字が書いてある

『132』と書かれたドアを開けると、遠くに眞人を必死に探す現実世界の父の姿が

「ここを出ればすぐに帰れる」というヒミ

そこへ大量の巨大インコが攻めてきて、眞人とヒミは一歩だけ『132』の外の世界へ逃げる

「取っ手から手を離すと、入口がわからなくなり、不思議な世界には戻れない」というヒミ

 

眞人に気がつき駆け寄ってくる眞人父

手を離せば、父のいるすぐに現実世界に戻れる状態の眞人ですが「夏子さんを探す!」と、不思議な世界の中へ再び入ります

 

この時、たくさんの巨大インコが現実世界へ出てしまい、かわいいセキセイインコへ姿を変えるのですが、それをみた眞人の父が「眞人がインコになっちまった!」って慌てたのが面白かった

キムタク、こんなチョケたお芝居できるんだーって感激しちゃった

実写だと「木村拓哉」像を壊すお芝居はしないと思うので貴重だな、と

余談でした

 

夏子のいる産屋に入っていく眞人、外で待つヒミ

「夏子さん」と声をかける眞人に「なぜこんなところへ来たの?帰りなさい!」と返す夏子

天井から吊るされていた紙飾りの紙が、風とともに何本も眞人と夏子の全身に絡みつく

「あなたのことなんて大嫌い!」と突き放そうとする夏子に「夏子かあさーん!」と叫ぶ眞人

(ここで「え?母さん呼びしちゃう?」と思ったのでした)

風と全身に巻きつく紙で産屋の外へ押し出された眞人

ヒミが紙を燃やし、2人は倒れてしまいます

そして巨大インコたちがやってきて、ヒミだけ連れ去ります

 

1人目覚めた眞人は、光のトンネルのようなものをくぐって、その先で大叔父に出会います

(不思議な世界の入口となった塔は、ある日空から落ちてきて、ヒサコと夏子の母の大叔父が塔に魅入られて中に入ったまま帰らなかった、という成り立ち)

いろんな形の積木がアンバランスに積み上げられており今にも崩れそう

それは、この世界そのもの

 

※この辺りのシーンすっぽりよく思い出せないんですよね、寝てはいないんだけど、ボーっとしちゃってたかな

 

一旦、大叔父のところから離れて、ヒミの元へ行く流れ

 

眠ったヒミが巨大インコたちによって運ばれている

その後を追う眞人とアオサギ

巨大インコたちは「大王のとことへ届ける」と

尚、大王=大叔父(この世界を司っている存在のようです)

 

再び大叔父と対面する眞人

大叔父は、自分の立場を眞人に継がせたいと言う

悪意に染まっていない石が13個ある、それを眞人に積むように促す

悪意のない世界をつくるように、と

「この傷(自傷した頭の傷)は自分でやった、悪意のしるし」「自分は元の世界に戻りたい」「そして友達をつくる、ヒミやアオヤギみたいな」と、眞人は大叔父に伝える

そして、眞人は夏子をつれてアオサギと『132』のドアから現実世界へ戻る

ヒミとキリコは、別の時代のドアから過去の現実世界へ戻る

普通は、現実世界に戻ると、不思議な世界での記憶は消えるそうだが、不思議な世界のもの(キリコばあやのお守り)を持っていた眞人は記憶を失わなかった

そして戦後から2年経ち、眞人は父、義母、生まれてきた弟(たぶん弟だった)と4人で、東京へ戻る、という結末

 

ちなみに、この火の力を持っているヒミという女性(というより少女に近い?)は、眞人の母親のヒサコなんです

ヒサコは、まだ結婚する前に1年ほど行方不明になって、ケロっと帰ってきてその間の記憶がなかった、というエピソードがあるのですが、行方のわからなかった1年間、不思議な世界でヒミとして存在していて、時空を超えて息子である眞人がやってきて、行動を共にしていた、という

眞人と同じ時間軸からやってきた大人になった妹・夏子が、自分の妹だということも認識しているし、眞人が自分の息子だということもわかっています(だったはず)

幼い息子を残して、火事で亡くなってしまう自分の人生を知っても、それでも眞人を産むことを望み元の世界へ戻っていきます

 

眞人は、不思議な世界で、様々なピンチを潜り抜け、生と死、人とのつながり、若かりし実母との出会いなどを通して、決していいことばかりではない、悪意もある現実世界で、人とつながりながら生きていくことを選びます

大叔父は、自分がコントロールできる閉ざされた世界で理想の世界をつくろうとしたのかな

人と交わらなければ傷つくこともない、自分の世界の中だけにいれば現実を見ず理想的な空想の中にいられる、けれど、眞人は、自身と折り合いをつけて、現実世界を生きていくだけの成長を遂げたんじゃないかな、と思いました

 

キャストがやたら豪華

エンドロール観て、菅田将暉さん、柴咲コウさん、木村拓哉さん、木村佳乃さん、小林薫さん、國村隼さん、火野正平さん、風吹ジュンさん、竹下景子さん、大竹しのぶさん、阿川佐和子さんなどの著名な俳優(+シンガーあいみょん、+モデル滝沢カレン)さんの名前が並んでいて、いや、驚きました

やたらに豪華!

宣伝費がかからなかった分、キャストにお金をかけたんでしょうか?

木村拓哉さんは事前にチラリと耳に入っていたので、「あ、これキムタクだな」ってわかりましたが、鑑賞まで、ネタバレ情報を避けていたので、まさかこんなに著名人が声優をしていたとは思いませんでした!(数名はいるだろうと思っていたけれど)

 

そして、米津玄師の「地球儀」がいい🌎

物語の世界観を表現する曲と歌詞

常々、天才っているんだなって思わせるシンガー

 

 

一度では咀嚼できない

記憶がおぼろげな箇所があったり、時空を超えちゃってるので、登場人物とこっちとあっちの世界のつながりがちゃんとわかってなかったり、細かい拾えていない部分も多々ありそうだし、そう、一度ではとても咀嚼できない作品だった

でも、個人的には面白かった

子どもでもわかりやすいストーリーとは言い難いし、宮崎駿が詰まった哲学ファンタジーといった印象が強かったけれど、むしろそれがいい

宣伝がなかったのも、何の前情報もなく(キムタク情報はちょっとあったけど)みる新鮮さがあって、楽しかった!

どこまで大衆受けするか、興行収入が伸びるのかについては、何とも言えませんが、一つ言えるのは、宮崎駿の最後(になるかはわかりませんが)の長編アニメ映画は、「風立ちぬ」より「君たちはどう生きるか」の方が俄然しっくりくる!

 

 

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