「今夜、世界からこの恋が消えても」公開初日感想レビュー

映画

  

   

  

  

恋愛映画にキュンキュンしていたのは遠い過去

全くこの映画のターゲット世代ではないであろう人が観たリアルな感想

  

※途中から内容に触れますので、ネタバレしたくない方はお気をつけ下さい

  

  

  

  

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結論!

結論から言うと

  

「大人過ぎるアナタも観てよし!」

   

なぜなら

恋愛が前面にあるんだけど、それだけでない家族や友達との「人と人とのつながり」やまさに物語のコアである「記憶」は、どの世代の琴線にも触れる普遍的なテーマだから。

 

ベタ展開が多いんだけど(数々の過去作品がデジャブる)、ベタ=鉄板 間違いはない

「今だからこそ」のな主演×確実な演技のキャスト×演出諸々によって、素敵な作品に仕上がっていました!

W主演の道枝駿佑くん福本莉子ちゃん役柄がハマっていてよかったし、ヒロインの親友役の古川琴音ちゃんはもう「キミがいなければこの映画は成立しなかった」ですよ。自分の泣きのピークは琴音ちゃんだから。

 

飽きることなく最初から最後まで物語に入り込めました。これは予想外。

恋愛メインのシーンはちょっと引いて持て余すだろうなぁと思っていたもので。

  

さらに言えば、大人過ぎるアナタには、夜の鑑賞をお勧めしたい。

道枝くんや莉子ちゃんを観にきてるドストライク世代が少ない方が大人はひっそり没入できると思います。

いやー、ドストライク世代の情緒すごかったから!「きゃー」とか「ぐすんぐすん」とか心の声漏らしてくるから!もちろん小さくだけどね、近くorたくさんいるとそこそこのムーブになるのよ。

若かりし頃なら、きっとあんな感じで盛り上がったよなーと、羨ましいな、多感!

  

 

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あらすじ・メインキャスト

クラスメイトに促されるまま、神谷透が日野真織に嘘の告白をすると、彼女は本気で好きにならないことを条件に交際を承諾する。やがて互いを知るにつれ、透は本気で彼女に惹かれるようになるが、真織は一日ごとに記憶を失ってしまう難病「前向性健忘」であることを明かす。記憶をつなぎ留めようと一日の出来事を日記に記す彼女に対し、少しでも幸福な時間を過ごしてほしいと願う透だったが、自らも重大な秘密を抱えていた。真織の幸せを守るため、透はある計画を練る。

シネマトゥデイ

  

神谷透/道枝駿佑(なにわ男子)

日野真織/福本莉子

綿矢泉(真織の親友)/古川琴音

神谷早苗(透の姉)/松本穂香

  

透の父役は、萩原聖人さん(飲んだくれの親父がホント似合う)、真織の父役は、野間口徹さん(真面目ないいパパ)、母役は水野真紀さん(献身的なやさしいママ)。

透が助けるクラスメイト役に前田航基さん(まえだまえだの兄ね、いじめられっこキャラのデフォルメすごかった)。

  

  

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公開初日劇場の様子

鑑賞したのは、公開初日(2022年7月29日)の18:00台スタート20:00台終了の上映

客席はざっと見て35%くらいの入り。

初日なので、もっとたくさんいるのかな、と思っていたのですが、平日だったり新型コロナが過去最高レベルで流行っていたりする影響もあるのでしょうか?

観客の95%が女性で、年齢層は10~20代が多かったです。お友達同士でキャッキャッというグループ鑑賞が最も多くて、続いてママと鑑賞(中高校生かな?)。意外とカップルはいなかった。両側の席には単独鑑賞の方々が。

  

  

 

 

感想(※これから観る人は注意)

 

※ ここからは内容に触れた感想になるので、ネタバレしたくない人は注意

 

主演が役にハマっていた

道枝駿佑さん福本莉子さんがW主演をつとめた本作品。

映画の宣伝に2人で出ずっぱりでしたよね。

2人とも役柄にとてもハマっていて素敵でした。

内側から滲み出る「きっと今しか切り取れない彼らの何かしら」に心が動かされました。

これがてヤツなのでしょうか。

素材だけでなく、切り取った監督はじめスタッフの腕ともいえる。

   

※追記(8/14)

8/7に、YouTubeの東宝MOVIEチャンネル公開された、映画『今夜、世界からこの恋が消えても』公開記念特番「透と真織が教えてくれたこと」の動画の中で、三木孝浩監督が語っていた言葉が「まさにそれだー」だったので追記させていただきます。

 

「伸びしろのある俳優さんたちとお仕事する時に、成長する過程を映画の中に刻み込む、ある種ドキュメンタリー的な目線というか。成長する過程がそのキャラクターとシンクロした時に、その時その二人にしか撮れない作品になるんじゃないかと」

東宝MOVIEチャンネル

  

この作品は、各々の役柄と道枝さん、福本さんの成長過程という側面ももっていて、あぁだから、すごく2人が役柄にハマっていると感じて、滲み出る「きっと今しか切り取れない彼らの何かしら」に心が動かされたんだな、と腑に落ちました。

 

 

こちらの動画では、道枝さんと福本さんがどのように役と向き合って作品をつくっていったのかを追っていて、とても興味深かったです。映画と併せて観ることをおすすめ!

  

  

主人公の透

道枝くんは、初主演映画ということで、

「『これを俺がやるのか』というプレッシャーが大きくて。めちゃくちゃ悩みましたし、難しかったですね」

スポーツ報知

と話していました。

  

また、三木監督は、

「キラキラのアイドルオーラがすごいので、透の空気感を出すのは大変だったと思います」「道枝くんの柔らかい空気感がすてきで。最初は、透はクールなイメージでしたが、道枝くんの魅力を生かす演出に変わり、作品をよりよい形に仕上げることができました」

スポーツ報知

と語っておりました。

 

そんな道枝くんの透役ですが、とてもリアリティがあってよかった

そこにいたのは、道枝くんではなくて、透でした。

「よく見るとイケメンなのに大人しくて地味な文科系男子」って学生時代いたなーって。あ、オーラは抑え気味でしたけれど消しきれてなかったです笑 これはもう生まれもったものなのでしょう。でも道枝くんて、ビジュアルいいけど割とポンコツなイメージあるから丁度いいのか?

常々、道枝くんて、感情が表に出やすい表情豊かな人だと思っているのですが、表情筋が鍛えられているからでしょうかね、映画の中の、ビミョーな本当にビミョーな表情(筋?)の変化が絶妙に透の心情を表現していて、おぉ~っと目が離せなかった。映画館のスクリーンで観たから余計に感じたのかもしれない。

真織との恋愛関係については文句なしです。こんなデキた彼っていますか?少しずつ真織に惹かれていく心情、愛する人を想う姿に、大人過ぎる自分ですら、遥か彼方の学生時代の恋愛、恋人の記憶の蓋があきましたわ。もちろん、透とは程遠かったですけれども。

ただ、父との親子関係では、いい子過ぎやしませんか。幼くして母を亡くし、父は飲んだくれて母の死から逃げていて、姉を応援するために家事に勤しむ透。いい子すぎん?透って。

途中で、父に一度だけ感情を強くぶつけるシーンがあって、「姉は僕や父とは違う」「もう僕は逃げたくない」みたいなことを言ってたのですが、基本的に透は逃げてないよな?真織の反応にちょっと戸惑ったことはあっても、基本的に自分の人生から何一つ逃げてなくない?

道枝くん自身は親に反抗とかしてなさそーみたいないい子感がにじむというか。直後に、反省を述べる父に「誇らしい」みたいなことを伝える流れがあったのだけれど、いや、若者、もっと葛藤してもっと複雑な感情抱いていいよ!荒ぶれよ!って思っちゃった。

ところで、あらすじの「自らも重大な秘密を抱えていた」の文言。思いませんでしたか?あぁ透は病で亡くなるなって。私は思ってました笑。

だいたい感動モノの恋愛ドラマといえば、喪失と相場が決まっている

そして、ヒロインが既に記憶を喪失している。それを超える秘密となれば、大病と死、あるいは本当は存在しないとかのとんでもファンタジーかと。

「母が心臓が弱くて突然死」エピ、そして姉の「(真織のためにも)元気でね」の台詞、あぁ~もう心臓の病で亡くなるフラグが立ちまくる! そしてやっぱりの突然死。もう少し、息切れするとか、ちょっと胸が苦しそうとか、透自身に伏線張ってもよいような(自分が伏線に気づいていないだけ?)。意外性はゼロだったけれど、喪失感エグい。

亡くなってからは、透は皆の「記憶の中の人」になるわけです。透は若くして亡くなったけれども「生きて亡くなって誰かの記憶の中に残っていく」って誰もが経験する普遍的な出来事。だからこそ、この映画は、幅広い世代に響くと思うのです。

「アナタの中には、誰とのどんな記憶がありますか?」「アナタは、誰の中にどんな記憶として残っていますか?」そんな問いかけをされた気分がしました。

自分は、繊細な役柄を演じる道枝くんが、好きですね。うーん、でも妹は、道枝くんは性格悪い役が似合うって言ってたし、好みの問題か。

  

ヒロインの真織

まず基本的にカワイイです。ビジュアルがよくて困難にぶちあたって絶望しても逃げずに前向きに生きてるって、まさに王道ヒロイン

記憶があろうがなかろうが、そりゃ透でなくとも惚れるわい。

だからこそ、つい透の前でうたた寝をしてしまい記憶がリセットされて混乱する真織、花火大会の日に、涙を溜めながら「忘れたくない」という真織が、際立っていました。

花火をバックにした、透と真織のキスシーンは美しかったですね。あぁアオいハルこの上なし。

互いの気持ちが募っていく流れが共感できて、ベストタイミング、ベストシチュエーションでのキス。しかもこっちは「透、亡くなるよな」っ思いながら観ているからさ、切なさ倍増。

透が急に亡くなって、真織は大混乱のメンタル錯乱になるわけですが。そりゃそうですよね。毎日自分の記憶を喪失しているのに加えて、どうやら自分にはラブラブの彼氏がいたけど亡くなったっていう喪失を毎日経験するわけで・・・あー地獄

記憶の上書きがあって透のことはなかったことになり、落ち着きます。そして、数年後、記憶が回復し始めたタイミングで、透との日々を知らされるわけです。すんなり受け入れて綺麗に昇華したなぁ~と観ていたのですが、そこはやはり「年月が経った」ということと「記憶が回復し始めた」という要因が重なってこその、透という存在と受け入れだったのかな、と思います。

誰もが人生の中で出会う、大切なものや人との別れ。年月が流れ、未来に向けて動き出した時に、別れを自分の中に意味あるものとして取り入れ昇華させる経験、きっと誰もが持っていると思うんです。

そことリンクするからこそ、人と紡いだ日々や記憶を糧として未来へつなげていくこの物語は、幅広い世代に共感を呼ぶんだと。

余談だけど、「手続き記憶」の下りは、めっちゃ大学の試験でも、大学院入試でも、資格試験でもやったわ、って違う記憶が呼び起された

福本莉子さんは、もっと個性的な役柄も演じられそうな役者さんですよね。キャリアを積んでいく中で、演じる役柄の幅が広がっていきそう。

 

  

キーパーソン 真織の親友・泉

この物語は、泉がいなければ成り立たない

ヒロイン・真織は、毎日記憶がリセットされるし、主人公・透は途中退場するし、それをつなぐ(しかも重ーい十字架背負わされて)のが泉。

泉役を誰が演じるかで、物語の雰囲気や評価は随分変わるだろうなと思った。

いやー、古川琴音さんは、自分的に、ドラマ「コントが始まる以来でしたが、うーん、よかったです。

冒頭の現在のシーンから過去に遡り、また現在に戻ってくるのですが、年月を経て泉の中で変化する感情の表現力よ!まだ観客は全貌を知らない冒頭、苦しみ、葛藤、決断、後悔、あらゆるものが、琴音ちゃんからバァーって

記憶改ざんした日の真織の部屋での泉の嗚咽が、私の涙のピークだった。

真織と透のシーンから、透の姿が消えていく演出、ああぁぁぁ~ってなった。消えてく、消えてく~~。そして、それに涙する透の姉・早苗にもううぅぅ~ってなった。

両親離婚調停中、親友は記憶障害、しかもその彼氏からこの上ない十字架背負わされるって、なかなか難しい役どころでは?

琴音ちゃん、素敵でした。

この映画の裏主人公は、間違いなく琴音ちゃん演じる泉です。

 

  

透の家族

透は、幼くして母を心臓の病で亡くし、父は母の喪失から逃げて飲んだくれてろくでもない感じになり、姉が母替わりだった時期もあるが、小説家として飛躍するために家を出ていった、という境遇。

だから家事は得意。母親が残してくれた料理レシピとかみてつくっちゃう。もちろん、やりたくてやっているわけではないのだけれど。

真織に母の話をする時には「太陽みたいな人だった」って嬉しそう。

(余談ですが、他の人にはあまり話さない内側を自己開示し合って関係を強めるって恋愛アルアルよね。中高生カップル一度は通ってない?自分は思い返すと赤面しかない。真織と透が互いに「こんなこと人に初めて話した」とか言ってるシーンは、さすがにこちとら、むずがゆくて直視キツかったー若くない証拠だわ)

父は、母のために小説を書いていた。そして、母の死後、姉の早苗が小説を書き始めた。当初は、現実から逃げるために、そして徐々に人とつながるために。そして、透は、姉の小説を心の拠り所としていた。

姉・早苗の言葉は、透を支えてきた。そして、真織のことを「日記を読まないと僕のことを忘れちゃう」という透に「日記を開けばいつもそこにアナタがいるのね」と返す。直後の透の嬉しそうにちょっと饒舌になる感じ、姉よナイスリフレーミング。

そうやって、この家族はつながってきたし、姉の芥川賞受賞をきっかけに、歯車が狂ってしまった家族の再生を感じさせていたのだけれど。透が急死・・・。ある意味、透の生前に、家族で互いの思いを語り合い未来を向けてよかったのかな、とも思うけどさ。

この家族の話だけで、物語1本はいけるよね。未読だけど、原作ではもう少し家族関係を掘り下げていたりもするのかな。

もっと、この家族の幸せな未来をみたかったな、と思う。

  

  

どの世代にも響く映画

記憶を失うことは、自分の連続性を失うこと。

自分が自分である根拠を失うこと。

一日が終わるたびに自分を喪失すること。

それはどんなに不安なことか。

そして、そんな人の傍らに寄り添う人は何を思い願うのか。

家族、友人、恋人。

それでも人はつながっていくんだよね。

そして、姉・早苗も言っていたが、至って健康に生きていたって人の記憶は薄れていくのだ。そして老いていけば記憶はさらに低下する。

真織は、事故による記憶障害で記憶を失くし、透のことは日記や映像の中にしかない、でもそれを見るととても幸せな気持ちになる。記憶にはないはずなのに、過ごした日々はどこかに残っていて透の絵を描きたくなる。

たとえば、自分も、ものごころつく前の記憶はないが、家族写真をみたりエピソードを聴くと幸せな気持ちになる。初めてつきあった人の記憶は、あんなに強烈に好きだったはずなのに、今ではおぼろげに断片的にしか思い出せない。でもふとした瞬間の横顔や幸せや切ない気持ちはどこかに残っている。

世の中にはこんなにもたくさんの人たちがいて、誰しもが、誰かを記憶して、誰かの記憶の中に残っているんだよな。

そんなことに、ぼんやりと思いを馳せる映画だった。

「今夜、世界からこの恋が消えても」は恋愛映画ドストライク世代でなくても、どの世代にも響き何かしら心を揺さぶり動かす映画だと思います!

観る前に思っていたよりも、ずっとよかったなー。

  

  

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